イタリア中部地震の記事の書き起こし及び翻訳を行っています。
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イタリアにおける耐震・防災対策の課題は以下の8点であると個人の独断と偏見により考えている。
1. 鉄筋コンクリート(RC造)が最も耐震性が高いので、イタリアでRC造をもっと普及させるべき
アマトリーチェのRC造(鉄筋コンクリート)に関する資料 - Togetter
2. 古代ローマの建築技術や、ノルチャ(Norcia)の成功例にイタリアは学ぶべき
イタリア中部地震、震源地近くの街NORCIA(ノルチャ)は犠牲者ゼロ | AmicaMako Blog
3. もちろん文化的/歴史的背景が違うのでそのまま技術を受け入れることはできないが、日本を参考にできる点はすべき
日本と同じ自然災害大国であるイタリアの避難所生活/イタリアの「その後仮設住宅が1年経っても2割しか作られない」 - Togetter
4. アマトリーチェやラクイラの例などを見るに、歴史的建造物の耐震技術をもっと高める必要がある
5. 良くも悪くも、古いものを大切にしすぎる文化がイタリアにはある
「古いものを長く」イタリア流が裏目に 橋崩落嘆く住民:朝日新聞デジタル
※ジェノバの橋崩落事故に関する内容です
6. 財政難が大きな問題である。それはジェノヴァのモランディ橋(Ponte Morandi)の崩落事故からも垣間見える。
イタリアの地震対策が遅れている理由 | ロイター | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
7. イタリア各地に地震計がないことが大きな問題。
イタリアで大地震は震度はどれくらいだったんですか? - 海外の場... - Yahoo!知恵袋
イタリアの地震で地震計iPhoneアプリが3位に | スラド Submission
8. 国民が楽観的すぎる(いいことなんだけど!)
その他もっと見たい方へ
私は先日、熊本地震を被災したガイドである知人に会う機会があった。
彼は生まれも育ちも熊本県で、ふるさとに強い愛着を持っている。
先日1年ぶりに彼と再開した時、彼はこう言っていた。
" 自分たちが被災し、改めてボランティアのありがたさを知った。本当にボランティアの方には感謝しかない。また、自衛隊や消防などにも本当に感謝しかない。本当にありがとう。
私は熊本でずっとガイドをしていたが、地震で観光客が途絶え、無職になりバイトをはじめた。バイトの大変さがよくわかった。本当に大変で、一日がすごく長く感じた。
ライフスタイルが変わったのは辛い出来事だった。ガイドで観光客の笑い顔を見るのは私の生きがいだったから。
観光客が来た時、嬉しくて涙が出た。少しずつだが、観光客が戻りつつある。それが本当に本当に嬉しくて、幸せを再び感じた。
熊本にお金を落としてくれなくても、私達は嬉しい。熊本に来てくれるだけで、私は嬉しい。あなたの姿を見せてくれることが、熊本に笑顔が生まれることが、私にとって本当に嬉しい。
観光客が来ることが、ガイドである私の幸せで、本望だ。
そして、できることなら、本当に、皆に熊本の今の姿を見てほしい。見に来てほしい。"
誤解1:
イタリアで地震が起きると、被災者は快適な避難所やテントなどで暮らすことができる。
ラクイラ地震(2009/4/6)の「ごく一部」の事例が日本で注目されすぎているため、このような誤解が起こると考えられる。
確かに、ラクイラ地震の際、イタリア市民保護局によってテントが支給されていたが(出典: 「イタリア中部地震における心理社会的支援」)その環境は全員に行き渡っていたとは言い切れない。
実際余震による自宅の倒壊を恐れ、野宿をしている被災者もいる。(2009/4/7 朝日新聞夕刊より)
以下、朝日新聞から引用する。
「被災者の寝る場所の不足が深刻で、十数個の(※出葉による注釈: ラクイラ中心部にある陸上競技場での話である。一時的な避難所となり、数千人の避難者が集まった。)仮設テントが張られたが、全く数が足りない。多くの人が車中泊、または野宿をして一夜(出葉による注釈: 4/6の夜のことである)を過ごした。」
また、ラクイラ(アマトリーチェもまた同様であるが)は標高が高く、春先や夏場でも夜はかなり冷え込むため、とてもテント暮らしが快適とは言いづらいだろう。
参考資料:
【イタリア中部の大地震】現地の天気を解説 | ウェザーニュース http://weathernews.jp/s/topics/201608/250085/
その後もイタリアにおいては避難所と呼べるようなものは提供されずにいる。
現に「ラクイラ地震の際は、歴史的地区が大きな被害を受けたため、復興には膨大な時間がかかることが予想される。そのため、長期滞在に耐えうる質の高い環境を、短期間で整備することとした(出典:イタリアにおける震災復興プロセスに関する研究)」といわれている。
誤解2:
イタリアでは日本のように、被災後すぐに仮設住宅が被災者に提供される。
以下の記事(※イタリア語)によると、「震災(2016/8/24のもの)後1年の時点で、23%の仮設住宅が建設された」とある。
Terremoto Centro Italia, dopo un anno consegnato solo il 23% delle casette provvisorie richieste https://www.ilfattoquotidiano.it/2017/08/24/terremoto-centro-italia-dopo-un-anno-consegnato-solo-il-23-delle-casette-provvisorie-promesse/3813931/
このような事態なので、多くの被災者は親族の家に身を寄せるか、車中泊を強いられている。
1年もの間車中泊を強いられている人は少なくないとも報じられている。(出典: 国際報道2017 2017/8/25放送より)
誤解3:
ラクイラ地震で科学者に有罪判決が下ったのは、「地震予知」に失敗したからだ。
ラクイラ地震(イタリアで2009年に起きた地震で、裁判が起きたもの)で科学者が禁錮6年の刑に処されたのは、「地震の予知に失敗したから」ではなく、「住民に迫りくる地震の切迫性を十分に警告しなかった」からである。
被災者自身も、地震予知が可能だなどとは一言も言っていないし、そう思ってすらいない。
ただ、政府当局が「当分地震は起きないだろう」といった、地震の切迫性を市民に伝えずに、地震のリスクを「過小評価した」ことが裁判で問われているのだ。
http://raytheory.jp/2012/10/201210_laquila7/
https://te2ha.hateblo.jp/entry/2018/09/17/094348
誤解4:
イタリアではそれほど地震が多くない。
イタリアで地震が多いのは、端的に言えばユーラシアプレートとアフリカプレートの収束境界部分にあたり断層が多いためであり、プレートが年間4-10mmのペースで動いているからであるが、この地域は地質構造が日本以上に複雑で、単純なプレートの沈み込みなどでは説明できない。
(引用: ウィキペディア「イタリアの地震一覧」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%81%AE%E5%9C%B0%E9%9C%87%E4%B8%80%E8%A6%A7 )
参考資料:
イタリアの避難所と災害復興―西日本豪雨で話題の「体育館生活」と比較して― https://togetter.com/li/1245834
残念なことですが、阪神淡路大震災の際も同様な事例が報告されています(出典: 地震イツモノート)
そしてイタリアにおいても(観光客が)被災地で自撮りをし、市長がやめるよう諭したという事例があります。
「Mayor of Italy quake-leveled town asks ‘disaster tourists’ to stop taking selfies(イタリア中部地震(※)の被災地の市長が、被災地を観光している旅行者に「自撮りを撮らないで」と言った)」
※イタリア中部地震…2016年の地震
出典: https://www.rt.com/news/385589-italian-town-quake-selfies/amp/
また、イタリアにおいて2009年に起きた地震(ラクイラ地震)でも同様の事例があったようです。
「ここは、私たちの町の一部でした。
最近まで「日常」があった場所でした。
だから、まだ考古学的あるいは歴史的な場所のように扱うのは時期尚早です。
間違っても、写真を撮るために笑顔を浮かべる場所ではありません。
この瓦礫の下で死んだ人、そして彼らのために泣いている人がいます。」
(日本語訳は拙文)
引用元: La cosa più bella de L'Aquila è la voglia di normalità(ラクイラにおいて最も美しいことは、「日常」を取り戻そうとする願いである)
https://www.loccidentale.it/articoli/101036/la-cosa-piu-bella-de-laquila-e-la-voglia-di-normalita?amp/
以下は私の考えですが…。
いつ、どこの国であっても「被災地で自撮り(あるいはそれに類似するもの)」をするような無神経な人はいるものです。
ですが、それは非難されて当然であり、とても人間のするべきこととは思えません。(ただ、被災者の多くは「復興していない街を訪れ、その街の写真を撮る」ことは悪くは思っていないようです。(※)
そこで「笑顔を浮かべて自撮りする」ことが無礼で侮辱的だと言っているのです。
※…「彼の話では、私のようにラクイラの今を見ようとやって来る観光客は意外にも多いのだとか。
地元住民としてどのように感じるのか聞いてみたところ、「崩れた家の写真を撮られたりするのは、別に嫌な気持ちにはならない」とのこと。
嫌な気持ちになるのは、瓦礫が掃除された外観だけを見て「たいした被害じゃなかったんじゃないの?」と言われることなんだそうです。」
(http://blog.hankyu-travel.com/kaigai/europe/italy/2013/135524.php)
地震予知は根本的に不可能です。
「ラドンと地震の関係は昔から指摘されてはいたが、電波の異常や地震雲なども同じく、メカニズムは未解明。(INGVより)」
ラクイラ地震(イタリアで2009年に起きた地震で、裁判が起きたもの)で科学者が禁錮6年の刑に処されたのは、「地震予知に失敗したから」ではなく、「住民に迫りくる地震の切迫性を十分に警告しなかった」からです。
「このような小さな規模で何日も続く地震を「群発地震」と言います.体で感じている現地の人はさぞかし不気味な,不安な気持ちになったことでしょう.このような群発地震が起きている状況の中で,3月上旬には,独自に地震予知情報を出す人が現れました.空気中のラドン濃度で予知情報を出したジュリアーニさんが有名ですが,他にも複数人いたとのことです.
ちなみに,空気中のラドン濃度で地震予知をする方法は確立されておらず,科学的にはむしろできないことが多く言われています.実際,ジュリアーニさんが予知をした震源地と,ラクイラ地震の本当の震源地はずれていて,本当に避難勧告をして大勢の人を動かしていたら,震源から遠い人をわざわざ震源地に避難させるという危険なことになっていた可能性がありました.このように,いかなる方法であれ,現段階での地震の発生予測には大きな不確定性が伴うのです.場所にも発生時刻にも.不確実性を少しでも小さくするには,地震という現象そのものを解明しなければなりません.地震学はまだこの段階なのです.」
「地元研究者が一週間前に地震を予知(後述するが、これは「予知」ではない)していたが、政府当局は「パニックを起こす」として削除させていた。瞬く間に地震のうわさが広まり、拡声器を使って住民に避難を促す住民もいた。」
(朝日新聞2009/4/7より)
遺族や被災者も、「地震予知は不可能」だということは百も承知です。ただ、「ラクイラを離れる」などの選択肢もとれたはすなのに、当局が地震の切迫性を住民に周知しなかったことの「責任」を問うているのです。
「さて訴追理由に話を戻します.地震がいつ起こるのか,どこで起こるのか,といったことは現段階の科学のレベルでは予知することはできません.ならばなぜ,安全宣言など出したのか.地震が起こるかどうかは分からないのであれば,安全宣言ではなく,念のため備えておいてください,と言うべきではないか,というのが遺族らの主張でした.」
資料: