忍者ブログ

出葉の書き置き

イタリア中部地震の記事の書き起こし及び翻訳を行っています。

松の針(宮沢賢治の詩)

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

松の針(宮沢賢治の詩)

  さっきのみぞれをとってきた
  あのきれいな松のえだだよ
おお おまへはまるでとびつくやうに
そのみどりの葉にあつい頬をあてる
そんな植物性の青い針のなかに
はげしく頬を刺させることは
むさぼるやうにさへすることは
どんなにわたくしたちをおどろかすことか
そんなにまでもおまへは林へ行きたかったのだ
おまへがあんなにねつに燃され
あせやいたみでもだえてゐるとき
わたくしは日のてるとこでたのしくはたらいたり
ほかのひとのことをかんがへながら森をあるいてゐた
   《ああいい さっぱりした
    まるで林のながさ来たよだ》
鳥のやうに栗鼠のやうに
おまへは林をしたってゐた
どんなにわたくしがうらやましかったらう
ああけふのうちにとほくへさらうとするいもうとよ
ほんたうにおまへはひとりでいかうとするか
わたくしにいっしょに行けとたのんでくれ
泣いてわたくしにさう言ってくれ
  おまへの頬の けれども
  なんといふけふのうつくしさよ
  わたくしは緑のかやのうへのも
  この新鮮な松のえだをおかう
  いまに雫もおちるだらうし
  そら
  さわやかな
  terpentineの匂もするだらう

PR

コメント

プロフィール

HN:
te2ha
性別:
非公開

P R